12月号県北雑学

延岡市には、天を突いてそびえる巨大な煙突があります。旭化成ケミカルズ(株)第一火力の煙突です。市街地のどこからでも見ることができ、延岡のシンボルといってもいいでしょう。
 大工場が立地する都市は、全国いたるところにあります。でも、街の真ん中の大工場に高さ200メートル近い巨大煙突が建っているのは、延岡ぐらいでしょうか。この光景が都市景観マニアなどの人気を呼んでいるのです。
 それだけではありません。夜の帳(とばり)がおりると、工場と街との光の競演が始まり、宝石箱をひっくり返したような大パノラマが広がります。


特に愛宕山展望台から眺める夜景は、ほぼ真西の南方地区から南南西の伊形地区まで約300度の超広角パノラマ。まさに壮観の一語に尽きます。もちろん「日本の夜景100選」「日本夜景遺産」に選定されています。
そんな素晴らしい夜景の指揮者が、大煙突です。まるで巨大なタクトを星空に向かって振り上げているかのようです。あるいは、天と地を結ぶパイプのようにも見えます。

この煙突は昭和50年(1975)3月に着工、翌51年3月に完成しました。高さは180メートルあります。同社第二火力(旧レーヨン工場内)の高層煙突の120メートル、宮崎市のホテル「オーシャン45」の154メートルをはるかに凌(しの)ぐ県内一高い構造物です。

煙突を支えている基礎は直径36メートル、深さは6メートルあります。煙突本体は下部直径12・8メートル、上部直径8・8メートルですから、細長いメガホンみたいな形になっています。コンクリートの厚さは下部が65センチ、上部は25センチです。

見た目には1本ですけど、中に直径2メートルの煙突が2本、2.25メートルと2・5メートルの煙突がそれぞれ1本ずつ入っています。4本の煙突を束ねる集合煙突というわけです。点検などでテッペンに上るには、煙突内のゴンドラを使って、30分かかるそうです。

外側は赤・白交互に帯状に塗り分けられていますが、各塗装の幅は22・142メートルで、上から赤・白の順に8条あります。航空法による赤色の表示灯は地上から45、90、135、178メートルの位置に2個ずつ取り付けられています。

30数年ほど前は、大煙突の半分ほどの高さしかない煙突が何本も並んでいました。それをノッポ煙突にしたのは、火力発電所のボイラーを通ってきた排煙を、高く遠くに飛ばすためです。排出される煙は、電気集塵機によって微粉末を回収浄化された後、ジェット状になって、無風状態であれば200メートル以上の高さに吹き上げられます。

市民の安全を願うかのように、威風堂々としたジャンボ煙突。誕生して33年余、きょうも延岡の街を見下ろしています。

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