美郷町「西の正倉院」

美郷町南郷区に「西の正倉院」と呼ばれる木造の大きな博物館があります。奈良の正倉院とまったく同じ大きさ、同じ構造になっています。

西の正倉院を建設するキッカケとなったのは、神門神社に保存されていた「唐花六花鏡」という鏡でした。7世紀に滅亡した百済(くだら=ひゃくさい=韓国南西部にあった国家)王族の遺品といわれています。

20数年前、奈良の正倉院に収蔵されている「唐花六花鏡」と同じものということがわかり、にわかに「西の正倉院」建設構想が持ち上がったのです。

とはいっても、オリジナルの正倉院は宮内庁が管理している上、1300年前の天平時代の非常に古い建築物です。しかも「校倉造」という特殊な建築方法で造られていて、その再現は容易ではありませんでした。

建物をそっくり模倣するには、宮内庁や奈良国立文化財研究所、建設省建築研究所、古代建築の専門家らの協力が必要でしたから、準備期間だけでも5年を費やしたのです。

完成は平成8年(1996)、構想から10年の歳月を要しました。使われた木材は、樹齢400〜500年の木曽ヒノキで、直径60センチの床柱、長さ8メートルの校木など、約800本にのぼっています。

建物全体は宮内庁の正倉院原図をもとに、間口33メートル、奥行9・4メートル、床下2・5メートル、総高13メートルと、まったく同じサイズで造られ、金具や瓦にいたるまで忠実に再現されています。

館内の展示物は国宝級の「唐花六花鏡」をはじめ鏡24個のほか、隣接する神門神社の天井裏から見つかった1003本の鉾(ほこ)、百済王伝説にもとづく「師走祭り」の紹介など、歴史ロマンを存分に味わうことができます。

また、西の正倉院のすぐ隣には百済や韓国関係の資料・物産を展示した「百済の館」、神門の町並を見下ろす「恋人の丘」に復元された韓国の東屋「百花亭」と、南郷区神門は百済・韓国づくしの町です。