人の暮らしをつなぐ橋

 

 
 
 

延岡市北方町上崎地区は、五ケ瀬川を挟んだ国道218号の対岸の集落。ここに、住民の長年の願いがかない、国道218号と集落をつなぐ上崎橋がか かったのが平成18年11月。地区では翌春から毎年、「なのはなまつり」を開いている。橋のたもとの五ケ瀬川沿いの約1ヘクタールの畑に鮮やかな黄色の菜 の花が咲き誇り、道行く人たちの目を楽しませる。橋への感謝を込めて開く手作りの祭りは、今や春の五ケ瀬川に欠かせないものとなっている。
「昭和42年ごろまでは、ここに渡しがあったんですよ」と話すのは上崎橋近くに住む甲斐靖さん(68)。当時の物資の運搬手段は人の背中にカゴを背負う 「かるい」。ナシなどの農産物をかるいに入れては渡しで対岸に渡り、国道を通る車に載せていた。町道で川水流地区まで行けるようになったことで渡しはなく なったが、約3キロの山道が続く町道は不便で仕方なかった。旧北方町の役場までは直線距離では1キロほどなのに、何十分もかかる不便さが続いた。架橋を 願って県庁などへ陳情に出かけたこともあるという靖さんは「橋の開通でそれは便利になった。住民の引っ込み思案もなくなった」とにっこり。
「50年来の住民の願いが実現したもの。感謝の気持ちを忘れないようにしなければ」。こう話すのは甲斐丈義さん(49)。なのはなまつりを主催する「上崎 ふるさとづくり推進協議会」の世話役、会計係として活動を支える。年一回、橋の手すりを会の全員で磨くほか、定期的に周囲の草刈りや清掃活動を続けてい る。みかんなどの農作物をつくる丈義さんは「国道へすぐ出られるようになり、急な注文にもすぐにこたえられるようになった。心理的な距離が近くなったのも 大きい」と橋の効果を話す。
また、集落内には橋の開通をきっかけに物産販売所も設置した。集落内だけでなく、橋を渡ってくる買い物客もいるという。かつては、集落内で他地区の人を見かけることはほとんどなかった。橋の開通で人の往来が活発になり、なにより、地区の孤立感がなくなったという。

 


上崎ふるさとづくり推進協議会会長の 原田隆さん(49)

 

上崎地区は26戸約60人が暮らす小さな集落です。なのはなまつりは集落一丸となって開いています。それまでは、地区全体で開く催しはなかったので、開いて良かったです。次の3月で4回目となります。これまでは、もちつきやスタンプラリー、物産市を開いてきましたが、この次はステージを作ってバンドも呼ぼうと話しあっています。人数も少ないので大規模にはできないけれど、ほかにもいろいろ仕掛けづくりをしていきたいですね。

 

 


 

平成19年から始まった「なのはなまつり」

 地区のみんなんで橋の清掃に取り組む