県北雑学

生まれ変わる高千穂鉄道跡

 

放置されたままのレール(延岡市富美山町)

「歩くから道になる 歩かなければ草が生える」とは、詩人で書家の相田みつをさんの名言です。
転じて「汽車が走るからレールが光る 走らなければさびつき 道床(どうしょう)に草が生える」。
思い出したくもない平成17年(2005)9月6日の台風14号、県北は未曾有の災害に見舞われました。高千穂鉄道も大きな被害を出して、その日から列車 の運行はストップしました。その結果、平成20年(2008)12月28日をもって全線廃止になってしまいました。あれから2年余。高千穂鉄道跡地は少し ずつ姿を変えています。
高千穂鉄道は、旧国鉄が「日ノ影線」として昭和10年(1935)、延岡〜日向岡元間で営業開始したのにさかのぼります。以後、日向岡元〜川水流 (1936)、川水流〜槇峰(1937)、槇峰〜日ノ影(1939)と急ピッチで線路を延ばしていったのです。その後やや間があって昭和47年 (1972)に日ノ影〜高千穂間が開通、路線名も「高千穂線」に改められました。
国鉄が昭和62年(1987)に民営化されたとき、高千穂線の存続が危ぶまれましたが、何とか踏みとどまって平成元年(1989)4月、第三セクターの高千穂鉄道(TR)として再出発しました。
ずっと赤字でしたが、経費を最小限に抑え、一方でサロンカーや、トロッコ列車を導入するなど、経営努力が払われてきました。ところが、前述したように台風被害で不通となり、そのまま立ち直ることなく廃止になってしまったのです。
廃止の後「せめて被害の少なかった高千穂駅〜日ノ影温泉駅間、延岡駅〜川水流駅間ぐらいは復旧してほしかった」という声があちこちから聞かれました。
今のところ、高千穂あまてらす鉄道(株)が高千穂駅〜天岩戸駅間の2.1キロでスーパーカートを運行したりして、高千穂〜日ノ影温泉駅間12・14キロの復活へ望みをつないでいます。
日之影町では、高千穂鉄道で使っていた車両を宿泊施設に改造、平成22年4月、旧日ノ影温泉駅構内に「TR列車の宿」がオープンしました。同構内には「癒しの足湯」もあり、訪れた人たちをよろこばせています。
また同年8月7日には「リバーパークひのかげ」がオープンし、高千穂鉄道の線路跡を活用した自動運転の乗用カート軌道が設けられています。このほか五ケ瀬川の流れを遊覧船や手こぎボートで楽しむことができます。
旧高千穂鉄道50キロのうち、延岡市の区間は、延岡駅から槇峰駅手前の綱の瀬川まで29キロと約6割を占めていますが、線路跡や駅舎跡はほとんど利用されておらず、
道床は雑草に覆われ、さびついたレールがいたるところに残っています。有効活用が待たれます。
  

線路を走るスーパーカートは子供達に人気

高千穂駅の駅名標はそのまま

列車を宿泊施設に再利用したTR列車の宿

「リバーパークひのかげ」は線路跡に乗用カート軌道を設けた

カートから見る五ヶ瀬川の風景が気持ちいい

日之影温泉駅のホーム跡に設置された足湯