オオバネムノキ

 水辺の植物ではありませんが、雨の多い6月に開花します。マメ科の植物で、ふつうのネムノキより葉がうんと大きいことから、その名がついています。

 分布域はトカラ列島(鹿児島県)を除けば、日本では日向市の耳川河口の権現崎から、延岡市追内町にかけての海岸に近い場所だけにしか見ることができません。
本土で最初に確認されたのは権現崎です。大阪万国博が開かれた1970年(昭和45年)のことでした。生息域がごく限られていますので、もちろん絶滅危惧(きぐ)種に指定されています。

 不思議なのは、本土ではナゼ県北の海岸部だけに自生するかです。種が海流によって運ばれてきたにしても、県南や鹿児島県の大隈半島、あるいはそれ以外の地域などに見られないのは、どうも合点がいきません。

 オオバネムといっても、ネムノキには変わりはないのですからから、夕暮れになると、葉が閉じて、眠っているようにみえます。花は白か淡いピンクをしていて、形はふつうのネムノキの花と同じく、女性が化粧のときに使うチークブラシのようです。

 今から4年前、延岡市の有志が、静岡県掛川市にある日本初の肢体不自由児療護施設「ねむの木学園」(宮城まり子園長)に、オオバネムノキを贈ったことがあります。オオバネムノキに詳しい県北植物愛好会会員の成迫平五郎さんを通して、同植物愛好会代表の塩満啓蔵さんが育てた苗を、贈ったものです。
 ということは、厳密にいうと、本土では県北の独占植物ではないことになります。ほかに岡山県などでも見つかっていますが、これはどうも誰かが植え込んだもののようです。
いずれにしても、珍しい植物には変わりありません。絶やさないようにしたいものです。(成迫平五郎氏撮影)