県北は美しく豊かな山・海・川に育まれた産物に恵まれ、それらに付加価値をつけた特産品やグルメ商品がたくさんある。さらに最近は、時代に即応した新たな特産品やグルメが続々と開発されている。しかし、多くは商品の名前も十分知られていないのが実情。そこで延岡、日向、門川、高千穂、日之影、美郷の各市町から近年登場した特産品やグルメをいくつか紹介する。 | 延岡市夢さららソーセージ・ジャーキー
牛や豚ともひと味違う、その上品なおいしさに、思わず「おかわり」が口をついた。言われなければシカ肉とは分からない。北川町商工会プロジェクト室が開発したシカ肉のソーセージとジャーキーは、シカ肉の需要拡大に一役買いそうな画期的な商品だ。 農林作物のシカによる食害が深刻化するなか、県内でも有害鳥獣として捕獲が進められているが、シカ肉は「生臭い」「硬い」などのイメージがあり、販路拡大が進んでいない。 そこでプロジェクト室では、猟友会メンバーの井本人義さん(54)を中心に、専用の加工施設を確保するなどして、シカ肉を活用した特産品開発を進めてきた。 肉質向上を図るため、北川猟友会の協力も仰ぎながら、新鮮なうちに血抜き処理した肉の中でも、上質なものだけを買い取る仕組みを構築。ソーセージ・ジャーキーの製造は、自家製ハム・ソーセージの店として知られる川南町のゲシュマック(株式会社フレッシュワン)に製造を依頼した。 もともとシカ肉は、高タンパクで低カロリーな上に、鉄分は牛や豚、鶏よりも豊富なことから、美に敏感な女性、ヘルシー志向の人にオススメ。井本さんは「一度食べてもらえばきっと気に入ってもらえる自信作。とりわけ、シカ肉の有効活用の道筋ができたことがうれしい」と話す。
| | 日向市シイラの生ハム
何といっても、シイラを生ハムに加工しようという発想が面白い。もちろん、味も申し分ない。ペッパーと塩加減が抜群のハーモニーを演出し、かみごたえもあり、酒の肴(さかな)にもってこい。日本酒や焼酎、ビールだけでなく、ワインにも合う。そのまま食べても、野菜サラダに乗せてもいい。 だが、製品として売り出すまでには人知れぬ苦労があった。 日向市平岩、ミツイシ(株)社長の黒木健心さんは「3年前になりますが、行政、漁協、民間とが協力して何か開発しようということで、私が事業として取り組ませてもらいました。最初はカツオでやってみたのですが、どうやってもうまくいきませんでした。それで、シイラに目をつけたわけです」 「カツオに比べると、シイラは安いというイメージがありますが、生ハムにすれば付加価値が高くなります。塩と香辛料で味付けしましたが、身がやわらかいので、塩を使うことで水分が抜け、しまりがよくなりました。製品として完成させるまでに、50〜60回試作品を作りましたが、シイラに切り替えたのが良かったですね。しかも、魚とは思えないものが出来ました」と、振り返る。 すでに、各地で絶賛され、立食パーティーなどでは欠かせない一品となっている。
| | 門川町ちょべっさん
まず、へべすポン酢「ちょべっさん」というネーミングに引かれる。開発したのは、門川町青壮年連絡協議会(黒木豊史代表)。
「協議会には観光、特産品、人づくりの3部会があります。特産品部会で、門川特産の金ハモに合うポン酢を作ってはどうかという意見があったので、ためしに2種類作ったら、評判が良かったのです」と、同協議会書記の岩田千種さん。 諸塚村やかた婦人会の協力もあって、同年9月には販売にこぎつけた。ネーミングの「ちょべっさん」は、同町尾末の人たちが願を掛けるときのことばで、七福神の「えびすさん」が「えべっさん」、それがさらに変化したものとか。 主原料はシイタケ、コンブ、カツオブシなどをベースにした「特製ダシ入り醤油」と地元で栽培されている「へべす」。これに醸造酢をブレンド。五十鈴農産加工センターで製造指導をしている原田こずえさんは「けっこう手間がかかりますね。ブレンドの分量は企業秘密です」。 魚の刺身、チリメンなど干物、焼き魚や焼き肉、野菜サラダ、豆腐、鍋物やギョウザのタレにもOK。万能ポン酢「ちょべっさん」である。 〝ポン酢はすっぱい〟という先入観があるが、「ちょべっさん」は〝まろやかな酸味〟。それに無添加でヘルシー。
| | 美郷町朝色紅茶
「紅茶」というと輸入品のイメージがあるが、県北でも風味豊かな紅茶が作られている。その一つが美郷町の「朝色紅茶」。 西郷・南郷・北郷の美郷町は、茶の栽培に不可欠といわれる霧の多発地域で、良質な茶の生産地帯。しかし、一番茶を摘み取ったあとに出てくる二番茶、三番茶をどうするかという悩みをかかえていた。 「二番茶、三番茶を摘まずに放っておくと、芽数が減って品質が悪くなり、収量も少なくなります。そこで、二番茶、三番茶を有効に使うにはどうしたらいいかということで、平成12年から創作茶をやってみたのです」 「紅茶やウーロン茶など色々な茶を作ってみましたが、紅茶が一番良かったわけです。平成20年から『朝色紅茶』として販売しています。おかげさまで好評です」と、美郷町農業振興課主幹の甲斐範浩さん。現在、「朝色紅茶」はJA日向西郷製茶工場で生産されている。 美郷町各地で採れた良質茶葉100%を使って作られた「朝色紅茶」は、風味の良さはもちろん、カフェインやタンニンが少ないので体にやさしく、子供でも安心して飲める。和菓子にも合い、甘味があるため、砂糖がなくてもおいしい。
| | 高千穂町
高千穂牛めし
〝日本一〟の称号を持つ高千穂牛を、観光客らに手軽に食べてもらおうとスタートしたのが「高千穂牛めし」プロジェクトだ。町内6店舗で、ステーキ丼、焼肉など格付等級A4以上の最高級高千穂牛を使った様々なスタイルの「高千穂牛めし」が食べられる。 高千穂牛は平成19年、鳥取県で開かれた5年に一度の和牛オリンピック「第9回全国和牛能力共進会」で内閣総理大臣賞を受賞し、名実とも日本一の称号を得た。 昨年4月、町中心部にできた「がまだせ市場」に、この高千穂牛専門のレストラン「和(なごみ)」がオープン。それに合わせ町内の他の飲食店でも気軽に高千穂牛を食べてもらおうと、料理の名称を統一して売り出すことにした。 バスセンター前の「食事処 幸楽(こうらく)」(電話0982・72・2348)では、「ステーキ丼」(1500円)として提供。高千穂牛を120グラム使用し、塩、コショウで軽く味付けし焼いた肉をご飯に載せ、しょう油をベースに生姜、ニンニク、大根おろしを加えた特製タレを掛けて食べる。 店主の宗勤さん(57)は「柔らかく、豊潤な旨みあふれる高千穂牛。その日本一の肉質を生かすためシンプルな味付けにし、タレでご飯が食べられるように工夫した。ボリュームはあるが、女性でも残さず食べてくれる」と話す。
| | 日之影町きんとん栗九里 品質・日本一で知られる日之影町特産の栗のおいしさを、そのまま丸ごと詰め込んだのが、マロンハウス甲斐果樹園が製造する「きんとん栗九里(くりくり)」だ。 日之影町内では250戸の農家が275ヘクタールの栗園で毎年、約130トンの栗を生産している。その地元産の栗だけを贅沢に使用。栗本来のまろやかさを残し、甘さを抑えた飽きのこない味に仕上げた。 大粒の栗が入っているため食べ応えも十分。県内はもとより県外からも高い評価を得ており、大阪、名古屋、三重、遠くはリピーターがいるアメリカ、フランスまでも発送しているという。「きんとん栗九里」の製造は、毎年9月から始まり翌年5月ごろまで。その間、毎日入荷する900キロ〜1000キロの取れたて栗をゆがき、皮と渋皮を丁寧に取り除き、砂糖を加えて一緒に煮込むという、とにかく手間のかかる作業が続く。 甲斐喜夫代表(60)は「栗は傷みが早いので、収穫した栗をいかに素早く処理するかがポイント。品質日本一の〝高千穂ひのかげくり〟100%で作った安全、安心な商品です」と太鼓判を押した。
| | ヘベす魅力と由来 今や宮崎県を代表する特産物の一つになった日向・門川の「へべす」は、日向市富高が発祥の地。 今から150年ほど前、富高の長曾我部平兵衛さんが、ある日、山に入り、香り高い実をつけている木を見つけ、持ち帰って自宅の庭に植えたのが始まり。 果実の外見はカボスやユズ、スダチに似ているが、種がほとんどなく、香りや風味も抜群。“酢ミカン”の評判は、たちまち富高中に広がり、平兵衛さんの名をとって「へべす」と呼ぶようになった。 「へべす」をキューツとしぼって食べる焼き魚、刺身、冷奴の味はこたえられない。栄養価も高く、必須アミノ酸9種類のうち8種類を含み、ビタミンCもたっぷりだから、美容・健康にいい。今が「へべす」の旬、食欲の秋に欠かせない一品。売れているのも納得がいく。 食欲の秋に欠かせない一品である。
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