県北雑学

高千穂町歴史民俗資料館と陣内遺跡

 高千穂町に行ったら、是非訪ねたいのが「歴史民俗資料館」。高千穂町コミュニティセンターに併設されている。
古事記によると、天孫ニニギノミコトがアメノコヤネノミコト、フトダマノミコト、タヂカラオノミコトらの神々とともに、高千穂に天降った。高千穂地域にはこうした神々に由来するいくつもの神話や伝説、神楽などが残っている。
また早くから高千穂地域で人々が生活していたことをを裏付ける古代人の遺跡が発掘されている。歴史民俗資料館には、神話に関するものから太平洋戦争に至るまでの史料が多数展示され、興味深い。

歴史民俗博物館

遺物など1万点以上を収蔵・保管・展示
歴史民俗資料館には、高千穂地域の歴史資料や遺物などの文化遺産約1万点が収蔵・保管されており、その一部を展示している。
1階は「民俗・ふるさとコーナー」。高千穂地域で使われてきた農機具や生活用具などが展示してある。
平和を訴えるB29と戦闘機「隼」の墜落事故
   その一角に終戦直後の昭和20年(1945)8月30日、親父山に墜落した米軍のB29の残骸が展示されている。当時、福岡県の貝島炭鉱に収容されていた連合軍捕虜に救援物資を運ぶ途中の事故だった。乗組員は12人全員死亡、遺体は後に米軍が収容している。
B29事故直後の20年秋、今度は徳義仁軍曹の戦闘機「隼」の墜落機体と徳軍曹の遺体が田原小河内の山中で見つかった。事故後1カ月以上経過していたという。資料は2階に展示されている。
この二つの墜落事故は、戦争さえなければ起こらなかったハズで、資料館を訪れた人々に、平和の尊さを語りかけている。
珍しい土器や石器を多数展示
2階は「歴史コーナー」になっている。「歴史のあけぼの」「歴史時代の高千穂」「郷土の文化財」の3つに分けて、分かりやすく展示されている。
「歴史あけぼの」コーナーには、旧石器、縄文時代、弥生、古墳時代にかけての多数の土器や石器、縄文時代の集落のジオラマなどを展示。
「歴史時代の高千穂」コーナーは、主に平安時代から江戸時代にかけての史料が展示され、この中には高千穂神社の鉄造狛犬(鎌倉時代・国指定重要文化財)のレプリカ、三田井親武木造(江戸時代)などがある。
「郷土の文化財」コーナーは、夜神楽や人形浄瑠璃に関する史料をはじめ、町内の神社・仏閣などを紹介。

●観覧時間は午前9時~午後4時
●休館日は12月29日~1月3日
●観覧料は大人・高校生200円、 小・中学生100円
●電話0982ー72ー6139

 

陣内遺跡

珍しい縄文時代の
石棒など多数
歴史民俗資料館を訪ねたら、同資料館からほど近い「陣内遺跡」へ足を運んでみたい(役場から徒歩10分)。「陣内・田向ふれあい館」の前にあり、土器などの遺物が埋まっている様子をガラス越しに見ることができる。
この遺跡は早くから存在が知られ、昭和18年(1943)に発掘調査が計画されたものの、戦時中だったこともあって実施されなかった。昭和27年(1952)、現場から非常に珍しい「石棒」(長さ31センチ、直径3~4センチ)の一部が発見されたことで一躍注目を集めることになった。石棒は後に発見されたものを合わせて52センチの長さになったが、惜しいことに一端が欠けている。
最初の発掘は昭和31年(1956)に神道文化会が実施しているが、大規模な本格的発掘調査は昭和35年(1960)、県教委が手がけ、のちに高千穂教委も実施するなど、数回行われている。
妊婦をかたどった
土偶なども出土
その結果、おびただしい土器や石器が出土し、手裏剣状の十字形石器や円盤状石器、石斧、石刀、石鎌、人物や動物を描いた土器、妊婦と見られる土偶など、貴重な遺物が数多く見つかったほか、今から4000~2300年前の縄文後期~晩期にかけての遺跡ということも分かった。昭和51年(1976)県指定史跡。
発掘された遺物は町の歴史民俗資料館と県総合博物館西都原資料館などに収蔵・保管・展示されている。町の資料館に展示されている石棒など一部はレプリカだが、実物と見分けがつかないほど忠実に再現されている。