農耕用水


県北の食卓に上がっている「ミツバ」は、そのほとんどが水耕栽培によって作られているのをご存知だろうか。

 水耕栽培は、土に種や苗を植えて育てるのではなく、作物は水にそのまま根を下ろして成長していくのです。延岡市祝子町の松田奏一さん=(有)丸祝延岡温室社長=は、県北で唯一ミツバの水耕栽培をしている人です。

 ガラス張りの温室に幅約1メートル、深さ約20センチ、長さ約20メートルの水槽がいくつもあり、ミツバはその水槽ですくすくと育っています。水は祝子川の伏流水をポンプで汲み上げて使っているわけですが「この水は1年を通して温度が16~18度と安定しています。しかも水質が良く、パイプで水を循環しますので雑菌が繁殖せず、同じ条件で作られますから、味も品質もいいのです。有機栽培ではなく無機栽培ですね」と松田さん。

 ミツバのほかに、10年前からニシキゴイの養殖も手がけていますが、なんと卵から親になるまで一貫した飼育をしており、中には1メートルある立派なコイが悠々と泳いでいます。「これも、祝子川のきれいで質のいい水だから可能なのです」と、祝子川の恵みに感謝しておられます。



デザートにイチゴ。たっぷりと練乳かけて・・・。イチゴは県北でもたくさん栽培されているのですが、ふつうの温室栽培や露地栽培ではなく、温室での「高設栽培」をしている人がいます。門川町松瀬の松田富男さんもその一人です。

 栽培面積13アールは同町一の広さで、温室には幅約30センチ、深さ約20センチ、長さ約30メートルの細長い箱が、高さ約1メートルの棚の上に置かれています。箱の中には培養土と水を通すパイプがあり、イチゴの苗はその培養土に植えられています。イチゴの品種は「さがほのか」で、培養土はボラ土やバーク(杉の皮)などが主な材料です。

 水は近くの五十鈴川支流の谷川からポンプで汲み上げており、1日に4回(6,8,11、15時)に分け自動的に給水されるそうです。収穫期は11月中ごろから6月初旬にかけてです。受粉はミツバチを使って行われるため、温室のすぐ横の木箱にミツバチが飼養されています。

 松田さんは「高設栽培で育ったイチゴは形が良く、実が締まっておいしいです。冬場は実が大きくなり、中にはテニスボールほどに成長するのもあります」と、そのメリットを話てくれました。