豊富な川魚


川の中流から下流にかけての魚の王者は、なんと言っても「アユ」(鮎)です。県北は全国でもアユ漁の盛んな地域で、今年も6月からアユ漁が解禁になります。具体的には五ヶ瀬川、祝子川、五十鈴川が6月1日から、北川と耳川は6月10日からです。アユを釣るには、いずれの川も河川漁協に入漁料を払う必要があります。

 初夏に釣れる若アユも美味ですが、産卵のため秋に下ってくる落ちアユもまたこたえられません。10月には、落ちアユを捕るやな漁が解禁になります。全国各地でやな漁が行われますが、やなの規模とその数(昨年は2か所、以前は3か所)において、五ヶ瀬川をしのぐところはありません。

 しかも、300年以上も前から受け継がれてきた漁法です。民俗文化財と言ってもいいでしょう。他県から来て、初めてやなを見た人は、そのスケールの大きさに圧倒されるのです。

 ともかく全国に名の通った五ヶ瀬川のアユやなですから、知名氏の来場も多く、過去、三笠宮寛仁殿下をはじめ、小松左京、具志堅用高さんほか各界各層の方々が見えています。釣り人としては、なんといっても元法務大臣の稲葉修氏(故人・新潟県)でしょう。稲葉氏は国会の合間をぬって、お忍びで何度も五ヶ瀬川に足を運んでいます。麦わら帽子をかぶって辛抱強く、釣り糸を垂れていたのが印象的でした。稲葉氏いわく”目黒のサンマ”よろしく「アユは、五ヶ瀬川に限る」

 全国には長良川(岐阜県)、錦川(山口県)、四万十川(高知県)、筑後川(大分、福岡県)など、アユで有名な川はたくさんありますが、五ヶ瀬川は、そのトップにランクされるといってもいいのです。

 料理は塩焼き、みそ焼き、背ごし、アユめしのほか、珍味のウルカ、甘露煮、そして焼きアユをコンブに巻いて煮込んだ「こぶまき」も絶品です。やな場では、アユを串に刺してダイナミックに焼きますが、そのときのいい香りがなんともいえず、環境省の「かおり風景百選」に選ばれています。「新ばんば踊り」の歌詞にも「やなでは鮎の河原焼き」とあります。

 やな場のほかに「あゆ場」が県北各地にあり、店が開いておれば、いつでもアユを食べることができます。