県北雑学

県北雑学

(延岡・日向・門川・美郷・高千穂・日之影 NORTH MIYAZAKI TRIVIA)


宮崎県林業技術センター本館
 
 
宮崎県林業技術センター全景
 
 
森の科学館展示室
 
 
スギの強度をチェックする
古澤英生主任技師 
 

宮崎県林業技術センター


 美郷町西郷区田代にある「宮崎県林業技術センター」を訪ねた。森房光所長以下16人の職員が、文字通り林業に関する調査・研究や技術開発、研修などに取り組んでおり、日本屈指の林業県・宮崎の将来を担う施設の一つといっても過言ではない。それだけに、非常に興味深いものがある。


森林は県北の宝

 宮崎県は面積7736平方キロメートル、そのうち約76%は森林。県北に限れば80%を超える。県北は、それほど豊かな森林という宝を持っている地域なのだ。

 平成22年度の国内木材産出額1945億5000万円のうち、宮崎県は北海道の16・2%に次いで第2位の9・3%、金額にして180億7000万円を占めている。その多くがスギ材で、生産量は全国の約14%、断然日本一を誇る。

 シイタケ生産も盛んで、特に乾シイタケは大分県に次いで全国2位。「日向備長炭」で知られる木炭(白炭)も和歌山、高知の次いで第3位。県北を中心に、宮崎県は日本の重要な林産物供給県となっている。

 こうした林業・林産物のさらなる生産性や質の向上など、林業の振興を目指して設置されたのが宮崎県林業技術センターである。美郷町役場本所近くの「葉桜ふれあい公園」のすぐ南側に広がる建物群と、それを取り巻く整備された樹林が同センターの施設。


林業に関する調査・研究拠点

 敷地面積は約41ヘクタール。構内には本館、研修館、研究館、研修寮、森の科学館のほか、林業研究に必要な多数の施設が設置してある。

 組織は昨年度まで管理研修課、育林環境部、特用林産部の1課2部体制だったが、24年度から新たに「鳥獣被害対策支援センター」が設置され、県内森林・林業の振 興、鳥獣被害対策に関する様々なニーズに的確に対応できる業務を行っている。


「抵抗性クロマツ」の開発

 「樹木の場合は野菜や草花と違い、研究結果が出るまでに長い時間がかかります」とは、育林環境部の古澤英生主任技師。今、クロマツやスギの研究に取り組んでいる。

 クロマツは防風林や防潮林として県北の海岸に多く植えられている。ところが、延岡市の長浜海岸のように、松くい虫(マツノザイセンチュウ)により、そのほとんどが枯死。現在は広葉樹林と化している。

 そこで、マツノザイセンチュウ病に強いマツは作れないものか..と、研究・調査中。すでにマツノザイセンチュウ病に強い「抵抗性クロマツ」が開発され、各地で苗木の植栽が行われているが、センターでは更に抵抗性の強いクロマツの選抜などを目指している。

 一方、スギのほうは品種特性の解明、成長が早く材質のいい品種の開発が、古澤技師らによって進められている。

 成長が早い上に高品質というのは、かなり難しい課題。成長が早ければ、それだけコストは削減できるが、質が低下したのでは高く売れない。しかし、早い成長・高品質のスギが開発できれば、スギ価格が低迷している時期だけに、林家をはじめ林業関係者、スギ王国・宮崎県にとっては、この上ない朗報となる。大いに期待したい。


花粉の少ないスギの開発

 「スギ」と聞いただけで「花粉症」を連想するなど、あまりいいイメージを持たない人もいる。そんな人にとって、花粉量が非常に少ない、うれしい品種もある。

 例えば「西臼杵3号」という品種は、花粉量がふつうのスギの100分の1以下というからスギの”優等生“。このような品種を選抜するのも古澤さんらの仕事。

 「飫肥杉(オビスギ)だけでも18種類あります。葉先が赤みを帯びていたり、花粉の着き方が違っていたり、さまざまです」という説明にビックリ。飫肥杉のほかに、東・西臼杵地区など県内全域から選抜されたスギが、展示林として植えられている。一口にスギといっても、多種多様。


長期にわたる地道な研究

 スギは苗を植え込んでから、伐期を迎えるまで40.50年かかる。品種改良といっても、結果は1、2年では出てこない。古澤技師たちは先輩技師たちから受け継ぎ、それをまた後輩の技師たちに引き継いでいく。

 宮崎県林業技術センターでは、県北をはじめ、宮崎県の森林・林業という財産を、次世代に残すため、こうした地道な調査・研究が続けらている。

 

こぼればなし

林業技術センターには、約110種類、600本あまりのサクラが植えてある。妹背(イモセ)、高砂(タカサゴ)といったウエディングを連想させるもや、楊貴妃(ヨウキヒ)があると思えばオカメという品種も。開花期はほとんど3月下旬から4月上旬だが、中には11月、12月に咲く品種など多種多様。