西郷のリーダーシップ

「敬天愛人」
西郷のリーダーシップ

 西郷隆盛を敬愛してやまない人は多い。それはナゼなのか。西郷に関する書物を読んでみると「南洲翁遺訓」に出会う。
ここに西郷の西郷たる精神を、見出すことができる。それをたった一つの言葉に集約すれば「敬天愛人」だろう。 遺訓24条に「道は天地自然の物にして、人はこれを行うものなれば、天を敬するを目的とする。天は人も我も同一に愛し給うゆえ、我を愛する心を以って人を愛する也」とある。
 訳すると「道というのはこの天地のおのずからなるものであり、人はこれにのっとって行うべきものであるから何よりもまず、天を敬うことを目的とすべきである。天は他人も自分も平等に愛したもうから、自分を愛する心をもって人を愛することが肝要である」(西郷南洲翁遺訓=財団法人西郷南洲顕彰会編集発行より)延岡西南の役会の森永重哉会長は「西郷さん(17歳のころ)は、薩摩藩郡奉行・迫田利済(としなり)の下で郡方書役助(こおりかたかきやくすけ=年貢を徴収するときなどの書記補佐)として働いてたある年、米が不作になり、迫田さんは農民の年貢を軽くしてもらうため、藩に願い出ますが、聞き入れられず、辞職します。そのとき迫田さんは“虫よ 虫よ 五つ節し草の根を絶つな 絶たば 己も共に枯れなん”という言葉を残しています。これが西郷さんの生き方に大きな影響を与えています」迫田の言葉にある「虫よ」は役人のこと。「五つ節し草」は重い年貢(税金)に苦しめられている農民。つまり、「役人たちよ、農民に重い税金を課して苦しめ、農民がいなくなったら、自分たちも破滅の道を歩むことになりますよ」という意味である。
 京セラを「世界の京セラ」に育てあげた創業者・稲盛和夫さん(鹿児島出身)は、「敬天愛人」を社是とし、南洲翁遺訓を経営面に生かしてきた一人である。「西郷のおしえは、普遍的なものです。特にこれから社会的に重い責任を担うであろうリーダーの方々に、ぜひ勉強していただきたい。少しずつでもその思想を身につければ、リーダーとして大きく成長されるものと確信しています」(PRESIDENT 2008.6.16より抜粋)といっている。

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