特集うなま備長炭

窯口から見える、真っ赤に焼けた木炭を次々とかき出す男たち。窯から出された木炭には、灰と土を混ぜた消し粉がかけられる。そして数十分で色と熱を失い、消し粉から取り出された木炭は選別され、一級品の白炭「宇納間備長炭」となる。

和歌山県(紀州備長炭)、高知県(土佐備長炭)とならんで宮崎県(日向備長炭)は日本三大備長炭のひとつとして知られ、中でも美郷町北郷区は本県の備長炭生産の中核を担っている。宇納間の名は備長炭のブランド名として有名で、指名買いの料理店なども多い。

北郷村史によると、同地区の木炭生産は寛文年間(1670年ごろ)に当時の延岡藩主有馬直純が製炭業を奨励したころには始まっていて、村の重要産業のひとつとなっていた。昭和30年ごろの最盛期には生産量が年間1800トンにもなり、高品質な「宇納間炭」「宇納間農協炭」として京都市を中心とした京阪地方で珍重されたという。

その後、生活様式の変化や安価な外国産炭の輸入増などの影響で生産量は激減。平成16年には211トンまで減らしたが、中国の木炭輸出制限、料理店や消費者の本物志向なども追い風になってやや持ち直し、ここ数年は240トン程度で推移している(JA日向取り扱い分)。

生産しているのは40戸の炭焼き農家。まず、約2メートルほどの長さで切ったアラカシを「く」と呼ばれる窯の中に入れ、「く」の下にある焚口に火を入れる。焚口の火を燃やし続けることで、「く」の中のアラカシが蒸し焼きになるわけだ。アラカシは徐々に水分を失い、高温になる。そして20日以上も経ったころ、「く」の上の方、アラカシの上部で自然発火し、低酸素の「く」の中で、アラカシは徐々に炭化していくのだという。

そしていよいよ、窯出しに向けた最終段階。ふさいでいた窯の入口の穴を、15時間ほどかけながら、少しずつ開けていく。酸素を得た窯の中の温度は1000度以上に上がり、炭は黄金色に輝く。そして、丸1日かけて、窯出しする。生木で入れたアラカシは約1カ月かけて、重量で8分の1、幹の直径で半分ほどになり、鋼鉄ほどの硬さがある、真黒な備長炭になるのだ。

北郷区木炭生産部会長の宇和田照夫さん(62)によると、宇納間備長炭の特徴は火付き、火持ちが良く、火力も強いこと。宇和田さんは「窯の中は見えないので煙の色とにおいを頼りに作業を進めていく。それだけに毎回、どんな炭ができるのかが楽しみ」と祖父の代から受け継いだ窯の前で話してくれた。

 「窯の中は見えないので煙の色とにおいを頼りに作業を進めていく。それだけに毎回、どんな炭ができるのかが楽しみ」

 宇和田照夫さん

(北郷区木炭生産部会長)