がんがん石

ガンガン石

                  ガンガン石

 大きな重ねモチを連想させる石が、延岡市大貫町4丁目の一角に腰を下ろしています。地域の人びとは「ガンガン石」と呼んで、大事にしてきました。

 大瀬橋北詰交差点から市道西階通線を西階方面へ1キロほど進み、コスモ石油ガソリンスタンド(ニシダ大貫給油所)のカドから西へ約400メートル行くと、ガンガン石に突き当たります。

 いわゆるガンガン石といわれるのは、丸みのある台座の石の大きさが東西1.8メートル、南北1.7メートル、高さ1メートル。台座に乗っている石は東西1.5メートル、南北1.2メートル、高さ80センチ。その周囲に大小数個の石があります。

 一見しただけでは、何の変哲もないどこにでもあるような石ですが、この石にまつわる話を聞くと、単なる石でないことが分かります。それは、石の前に立てられた「ガンガン石の由来」の案内板にも書いてあります。

 「考古学者の鳥居龍蔵博士が、大正二年から昭和四年に至って県内の古墳の調査をした。ガンガン石も調査の域である。『これは天然の露出石の上に数枚の巨石を置いたものである』。この石は人手で揺らすと揺らぐ様に置かれていて、木片や碑石で叩くとガンガンと音がするのでその名がつけられ、巨石として祀られていると記録している」 「石を叩くと雨が降る。雨乞いにガンガン石を叩けと言われた時代もあった」。(後略)

 案内板にはこのように書かれてあるわけですが、古代人の巨石遺跡なのか、古墳の石室なのか、それとも別の用途のものなのか、ハッキリしないのです。
 「人手で揺らすと揺らぐ・・・」とあることから、昔は上の石がグラグラしていたのでしょうが、今は栗石(くりいし=ぐりいし)の上に乗っていて、揺らぐようにはなっていません。台座の石と上の石の間には、注連縄(しめなわ)が巻きつけてあります。上の石を棒切れやコブシほどの石で叩くと、カーンと、乾いた高い音が響きます。「ガンガン」ではなく「カンカン」です。

 この場所には、ガンガン石のほかに耕地整理記念碑、沖の田地区道路改良工事記念碑、庚申塔、それに水神が2柱鎮座していて、さながら石の展示場のようです。ちなみにガンガン石は、阿蘇火砕流堆積物(溶結凝灰岩)からできています。

 上の石の上部には、明らかに人為的にあけられた直径10センチほどの窪みが、いくつも見られます。昔、ケガをしたりすると、ヨモギ(フツ)の葉などを、この石の上で叩いてつぶし、患部に塗ったりしていました。窪みは石で叩いた跡です。

 余談ですが、ガンガン石のすぐ近くの出身で、キックボクシング元東洋ウェルター級チャンピョン・富山勝治選手は、東京渋谷のスパゲティー専門店「がんがん石」のオーナーでした。富山選手が東京にその名を持ち込むくらい、地域に人に親しまれている石なのです。毎年4月には「ガンガン石祭」も行われています。