宮崎県北の自然を知る①

  

 

身近にある県北の豊かな自然。わたしたちはその実情についてどれだけ知っているでしょうか?

 

        1.野生動物写真家に訊く県北の自然。
        2.絶滅危惧されている生物たち
        3.わたしたちに出来ること

 

 野生動物写真家の栗原智昭さんが高千穂町の山中で、動物の写真撮影を始めて10年近くになります。絶滅危惧種の九州のツキノワグマ。すでに絶滅したのではとも言われて栗原智昭【くりはらともあき】います。栗原さんはツキノワグマの生存を、写真撮影することで証明し、行政などの保護の動きにつなげたいといいます。無人撮影装置を使い、クマの姿を追いますが、これまでのところ、クマの撮影には成功していません。


 しかし、数多くの他の動物の写真は撮影されています。そこから見えるのは、豊かな自然がまだまだ残っているということです。シカやイノシシはもちろん、アナグマ、テンといった、動物園でしか見ることができないような動物も、目の前に広がる、この県北の山々に、確かに存在していることが分かります。
 栗原さんは言います。「シカ、イノシシ、ニホンカモシカ、テン、野ウサギと、たくさんの動物が足もとに暮らしています。福岡のベッドタウンで育った自分からすると別世界です。ただ、気をつけたいのは、もともと持っていた自然の規模は今よりも桁違いに大きかったということ。だから、せめて今残っている自然は残すことが  求められています」。
大型の肉食獣は生態系のトップに君臨します。つまり、多くの動植物に支えられて生きているわけです。それは逆に、環境の変化、生態系の変化に大きな影響を受けてしまうことを意味します。
 これまでの文献などの調査から、1941年に捕獲記録があり、戦前までは九州にクマがいたことははっきりしています。しかし、その後は信頼のおける情報がないとして、絶滅の恐れがある野生生物を集めた国のレッドデータブック(RDB)では、九州地方のツキノワグマは「絶滅のおそれのある地域個体群」に、県のRDBでは「絶滅」に分類されているのが現状です。
 栗原さんは「九州のクマが現存するとしても、100年後も生きていくことはかなり厳しいでしょう。しかし、かつてはクマがいた豊かな自然があったのも事実で、まずは知ることが大事だと考えています。意外とたくさんの動物がいる。もしかしたらクマもいるかもしれない。そうしたことを知ることで自然を守ったり、自然に与える負荷が小さいライフスタイルを選択することもできるようになるのではないでしょうか」と話します。
 「クマというのはひとつのシンボルであって、そこにつながる自然に少しでも自分の活動を通じて興味を持つ人が増えてくれたらうれしいですね」

栗原さんの無人カメラによって撮影されたものです。

ニホンカモシカ
(国の天然記念物)

テン

タヌキ

ウサギ

 

栗原さんのサイト【MUZINA pressの自然派宣言!】 http://homepage3.nifty.com/muzina-press/