売り出せうまいもの特集_チキン南蛮
 
 〝名物にうまいものなし〟とは、遠い過去の話。マルチメディアの時代、だれもが情報の発信者になる時代を迎えて、おいしいものと、そうでないものの淘汰が進み、おいしいもののみが生き残るサバイバル時代を迎えている。そうした中で、売り出しに力が入っているのが、みやざき地頭鶏、金ハモ、チキン南蛮だ。
 地域外へ発信するために、まずは私たちが、地元にこんなに誇るべき食材があること、誇るべき名物があることを知ることが重要だ。
 
 
 
 
延岡発祥の名物料理「チキン南蛮」を売り出そうと有志で組織した民間グループ「NAN・BAN・TRY」が動き出した。7月8日をナン(7)バン(8)のごろ合わせで「チキン南蛮の日」と定めて催しを開いたり、Tシャツを作ったり、チキン南蛮が食べられる店を網羅したマップ作成に着手したり、キャラクター募集したりと、チキン南蛮のまちのPRに躍起だ。
 
上荷田洋一実行委員長(56)は「延岡にはいいものがたくさんあるのに、延岡人はPRするのが得意じゃない。チキン南蛮は延岡の隠れた宝であり、延岡が発祥なんだ、市内ではいろんな食べ方があるよとアピールすることで、まちおこしの材料になると思った。このパワーを地域おこし、B級グルメのまちおこしにつなげていきたい」と抱負を語る。
チキン南蛮は昭和40年代に、おぐらグループの創始者で延岡出身の故・甲斐義光(よしみつ)さんが、酸っぱさをタルタルソースで抑えてまろやかな味にしたチキン南蛮を生みだし、宮崎市内の店舗で出し始めたところ好評を博し、グループの人気メニューとして県内に広まった。

また同時期に、延岡市栄町の「直ちゃん」の創業者である故・後藤直(なおし)さんが、修業していた祇園町の洋食店「ロンドン」で食べていた“まかない料理”をヒントに、揚げた鳥の胸肉を甘酢に通しただけのシンプルなチキン南蛮を出し始めた。

 いずれにしても、安価な鶏肉を使った創作料理は「手軽に食べられるごちそう」として定着し、今に至る歴史がある。チキン南蛮が県民食として愛される理由について、直ちゃんの創業者の後藤さんの妻信子さん(77)は「味わいに親しみがあったからかもしれないですね」という。つまり、アジの南蛮漬けなど、甘酢に食材をつけて食べるベースが九州にあり、その延長上にチキン南蛮があるのではないかというわけだ。
 
 

 

第二、第三のチキン南蛮を目指そうと、売り出し中の食材がある。ひとつはみやざき地頭鶏だ。

こっこっこっこっこっこ。

 日向市美々津町田の原の山中、みやざき地頭鶏の養鶏場では、たくさんの鶏が餌をついばんでいる。養鶏場とはいっても、網で囲われた広い敷地の中央に餌場となる小屋があるだけ。その中で、地頭鶏が放し飼いにされているのだ。「普通の養鶏場のイメージと違うでしょ。これが地頭鶏の特徴なんですよ」と養鶏場の主人・黒木俊道さん(61)。

 飼育期間はオスが120日、メスが150日。通常のブロイラーの3倍もの長い時間をかけ、じっくりと飼育。しかも、その間は飼育密度1平方メートルあたり2羽以下という基準を満たした鶏舎で伸び伸びと平飼いされる。手間暇かけて育てられた鶏は、柔らかさの中に適度な歯ごたえがあり、味わい深い鶏肉として、高い評価を受けている。

 JA日向は生産から肥育、食肉への加工、販売まで一貫生産体制を確立し売り込みに励んでいる。そして、地頭鶏の素晴らしさを一人でも多くの人に知ってもらおうと、JA日向畜産課の大堀達也係長(44)が考案したのが〝地頭鶏フルコース〟だ。

 せぎも(腎臓)の赤ワイン煮、砂ずり・白レバーの刺身、白子の塩ゆで、胸肉のしゃぶしゃぶなど9品。「1羽丸々使えるようにそれぞれの部位にあった料理法を考え提供することで、差別化が図れる」と大堀係長。コース料理の提供を始めた日向市平岩の民宿「望洋館」の高橋耕一さん(30)は「新鮮なのはもちろん、部位それぞれが主役になれるのがみやざき地頭鶏の魅力。刺身、もも焼き、胸肉などどれをとってもおいしく、お客様からも『初めてこんなおいしいもの食べた』と言ってもらえる」と手応えを感じている。

 

を象徴する乙島から太陽がのぞき始める午前6時過ぎ。底引き網漁を終えて門川港に帰ってきた「朝戎丸(あさえびすまる)」のイケスには、鋭い歯を持った黒く長いハモがうねうねとくねっていた。小さいので400グラム程度、大きいのは1キロもありそうな立派なハモばかり。

山の幸に負けず劣らず、海の幸にも恵まれた県北で、忘れてはならないのが門川金鱧だ。
 門川町
 このハモを、紫外線殺菌した衛生的な海水で低温管理されている活魚槽で4—7日間畜養し、胃の内容物を排除した上で、骨切り加工して出荷する。これが5年前に宮崎県水産ブランドの認証を受けた「門川金鱧」だ。畜養することで、ハモにかかるストレスが軽減され、旨みが格段に向上するという。


 身はほのかな甘みと適度な弾力があり、京料理に欠かせない食材の一つとして、主に関西方面に出荷されてきた。小型底引き網漁が盛んな門川漁協では年間40トン前後の水揚げがあり、このおいしい魚を地元でも食べられないかと試行錯誤を重ねた結果、ブランド認証に結実した。


 ハモは小骨が多く、一般家庭ではさばけないし、プロの料理人でも手間暇がかかる。そこで門川漁協はブランド化に向けて自動骨切り機を導入、出荷するハモに付加価値を付けると共に、地元でも気軽にハモ料理が味わえるようにした。


 平成17年(2005年)にオープンした漁協直営店「うみすずめ」では、ハモの湯引き、しゃぶしゃぶ、天ぷらが乗ったうどん、天丼、定食を提供して人気メニューとなっている。隣接する販売所では、地取れの魚などに交じって、金鱧の湯引きやすり身が並び、これも人気商品となっている。

 

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