日本中のサーファーを魅了する 日向の海

 

 

日向市は、国内有数のサーフタウンとして知られている。市内には北から伊勢ケ浜、お倉ケ浜、金ケ浜という特徴の異なる浜辺があり、トイレとシャワーを完備したビーチハウス、駐車場などの施設設備も充実。年間を通し全国から大勢のサーファーが訪れ、波に挑む。ロングボードの出現などを背景に幅広い世代で愛好者が増えているサーフィンは今後、日向の〝観光まちづくり〟を推進する原動力となる可能性を秘めている。日向のサーフィン事情を聞いた。
日向灘から安定した波が寄せることに加え、温暖な気候、長い日照時間、冬場でも16度以下にならない海水温の高さなど、宮崎県はサーフィンをする上での条件に恵まれている。サーファーの中には、物価の安さや人情の厚さにひかれ移住する人も少なくない。
日向市では、日本サーフィン連盟が結成された草創期の昭和40年(1965)ごろ既に金ケ浜でサーフィンが行われていたとされ、〝サーフコーストみやざき〟の中でもメッカ的存在。日向市観光振興課によると、年間7万人以上のサーファーが訪れている、という。
「海が間近にあるので出勤前や、夏場は仕事帰りにサーフィンができる。ライフスタイルの中にサーフィンを取り入れやすい環境が整っている」と話すのは、日向サーファーズクラブ会長の三股信夫(みまた・のぶお)さん(55)だ。
15歳でサーフィンを始め、全国の海を回ってきた。全日本医科歯科学生サーフィン選手権の誘致、地元のサーファーによる手作りの大会「のりのりカップ」の創設など、サーフィンを活かしたまちづくりを牽引する三股さんは、「波質は日本でもトップクラス。加えて、これだけ近接したエリアに上級者まで楽しめるポイントが点在し、駐車場やビーチハウスなどの施設が充実している場所はほかにない」と力説する。
確かに、日向市のビーチは、施設面では県内トップクラスにある。平成5年4月に完成した伊勢ケ浜ビーチハウスに続き、平成19年4月にお倉ケ浜に男女別のトイレ、更衣室、シャワーを完備した待望のビーチハウスが完成。昨年4月には、金ケ浜にも温水シャワーを供えたビーチハウスができた。
そうした恵まれた環境を生かし今年は、平成18年以来5年ぶりというアマチュア界のメーンイベント「第46回全日本サーフィン選手権大会」(8月24日〜28日)の誘致が決定。恒例の全日本医科歯科学生サーフィン選手権、プロツアーのWQS国際プロサーフィン・2スター(10月8〜10日)と、ビッグイベントが目白押しだ。
しかし、日向が真のサーフィンタウンとなるには、課題も多い。その一つがライフセービングシステムの導入だ。
三股さんは「年間を通してこれだけ多くの人が訪れるようになると、問題となるのが安全面の確保。夏場だけの監視員はいるが、ビーチパトロールしながら注意を喚起したり、事故発生時にはすぐに救助できるシステムの導入が不可欠」と話す。
海外や国内の先進地では既に、サーフ・ライフセービングをシステム化している。県内でも、宮崎市の青島サーフィンセンターがインストラクターの養成講座を開くなど、取り組みを強化している。
「サーファーは自己責任において自分の命を守るという昔からの考えは生きていると思うが、初心者にいろんなことを教え、『波乗りってすごいですよ、楽しいですよ』って言っている割には、安全確保という面で遅れている」
 「県が修学旅行生の受け入れなどを視野に、波旅プロジェクトに力を入れるなか、日向にも話が入ってくると思うが、その時にライフセーバーがいないと、受け入れる側も『いいですよ』とは言いにくいだろう」と言うのだ。
黒木健二日向市長も「サーフィンは、海という癒やしの空間で楽しむもので、ストレス解消になるという話を聞く。サーフィンに対するイメージも今後、大きく変わってくると思う。それだけにライフセービングシステムの話はありがたい。NPO法人の設立など、そうしたシステムづくりが今後は必要になってくるだろう」と前向きだ。 
今年の全日本選手権などを通じ日向が名実ともに〝日本一〟のサーフィンタウンとして脚光を浴びるためにも今後、ソフト面の充実が急がれる。