高千穂の夜神楽三十三番

平安時代末ごろには舞われていたといわれる高千穂の夜神楽だが、三十三番が民家で舞われるようになるのは江戸時代末から明治にかけてで、それまでは神職が神社で舞っていた。
国学が盛んになると、古事記や日本書紀の神話を広く民衆に知らせる必要から国生みや岩戸開き、天孫降臨などの神話を取り入れた「三十三番」が成立し、里神楽として民間に広がっていったという。三十三番は、観音様が三十三の化身により人々を救うという「天の三十三天」の思想によるものといわれている。

 1、彦舞 猿田彦大神が一斗枡にのぼり神庭を清める。七番までのよど七番で願成就とする。
 2、太殿 注連縄を張って高天原と定め、ここに八百万神を招く舞。難しく、古参者が舞う。

 3、神降

 降神の舞で神を招く。以下三番を式三番といい、重要な祭典では必ず舞う。
 4、鎮守 土地を祓い固め、神を鎮めまつる。動きの激しい舞いで、霊を鎮める意味もある。
 5、杉登 氏神が御神屋に降臨する。山の神であり、荒神でもある鬼神が現れる。
 6、地固 猿田彦大神が一斗枡にのぼり神庭を清める。七番までのよど七番で願成就とする。
 7、幣神添 耕地を潤して国造りをする。神楽宿の主人と元締に太刀を渡す「宝渡しの儀」がある。
 8、武智 むちかむしとも言う。戦い準備の舞。荒神杖の両端の赤と青の幣は、火と水の力を表している。
 9、太刀神添 太刀を使った勇壮な舞。太刀の威徳をたたえ、神威により厄難を祓う舞。
 10、弓正護 弓を持ち悪魔を祓う舞。最後に弓矢を氏子に渡す「宝渡しの儀」がある。
 11、沖逢 水神を祭る火伏せの神楽。天村雲命がもたらした水は今も高千穂の天真名井でわき続けている。
 12、岩潜 剣の舞。白刃を持ち回転などする。岩の間を流れる激流を表現しているという。
 13、地割 かまど祭で重要な舞。神主と問答あり。荒神は神主の祓いで守護神となる。
 14、山森 猿田彦大神が一斗枡にのぼり神庭を清める。七番までのよど七番で願成就とする。
 15、袖花 猿鈿女命が天照大神のお使いで猿田彦を迎えに行く舞。縁結びの舞としても親しまれている。

 16、本花

 膳に米と榊を乗せ、米の収穫を祝い豊作を祈る。鈿女命と猿田彦の結婚を祝う神楽。
 17、五穀 猿田彦大神が一斗枡にのぼり神庭を清める。七番までのよど七番で願成就とする。
 18、七貴神 農神の舞。親神は六尺の杖を持つ。七人の子神を育てる舞だが、見ていて楽しく人気がある。
 19、八鉢 少彦名命が身軽な舞をする人気の舞。太鼓の上での逆立ちといった大技は見どころ満点。
 20、御神体 酒こしの舞。二神が酒をつくって酔っ払うユーモラスな舞。見物人も大いに盛り上がる。
 21、住吉 海神の舞。稲荷神楽ともいう。最初から歌が入り、海神をたたえまつる。
 22、伊勢神楽 岩戸を探る舞で岩戸開きの準備となる。祓いの舞はおごそかに舞われる。
 23、柴引 天香久山の柴を引き岩戸の前に飾る。柴とは榊のことで、今でも夜神楽の榊は天香久山から採る。
 24、手力雄 天照大神が隠れている天岩戸を探し当てる。手力雄が岩戸の中の様子をうかがう。
 25、鈿女 天岩戸の前の舞。神楽の起源といわれる。鈿女が優雅に舞うさまは美しい。
 26、戸取 天岩戸を開き、天照大神に再び出ていただく。鈿女から一転、手力雄神の舞いは迫力満点。
 27、舞開 鏡を両手に持って、天照大神の再臨を喜び祝い舞う。ほしゃどん全員が神庭で喜びあう。
 28、日の前 天照大神の出御を祝福する。神送りの舞。この舞で内外の注連が一体になる。
 29、大神 猿大海神の清めの舞。願掛け願ほどきの神楽。災いを祓う静かな舞は古参者が担当する。
 30、御柴 二神が束ねた柴に乗り、村人多数に担がれて外注連を回り、神庭で神主と問答する。
 31、注連口 神送りをする。注連を解き、神を送りだす舞。みどりの糸をとって注連の前で舞う。
 32、繰下し 雲下ろしの用意をする舞。雲綱をとり外注連に向かって舞う。
 33、雲下し 雲を下ろすフィナーレの舞。紙吹雪が舞い散って三十三番が大成就する。

 ※地区によって番組や順番が違うことがあります。