自分たちの町の活性化は自分たちで

 

ホタルが乱舞する北川/資料写真

恵まれた自然環境を後世に 精力的に活動する「北川やっちみろ会」

 ホタルが乱舞し鮎が群れ泳ぐ清流・北川、深い原生林に包まれた秘境・大崩山、スカイスポーツの拠点・鏡山、希少動植物の宝庫・家田川坂湿原など、多様な自然環境に恵まれた延岡市北川町。町内ではそうした自然環境を後世に残そうという活動が活発だ。その一つが、合併を機に「自分たちの町の活性化は自分たちで」と住民主体に組織された「北川やっちみろ会」。3つの支部ごとに活動の柱を決め、94人の正会員、イベント時に協力する準会員30〜40人が精力的な活動を展開している。

 旧北川町は平成19年3月、延岡市と合併した。合併に対する賛否両論が町内を二分し、隣接する旧北浦町、旧北方町より1年遅い合併の選択となった。
町が合併後も廃れないように、合併時のしこりを乗り越え、民間でできることを民間でやっていこうと平成20年10月9日、早瀬純一郎会長ら7人の発起人の呼びかけで発足したのが「やっちみろ会」だ。
会の名称は、「とりあえず、やれるところからやってみよう」という思いを込めて命名された。

町内を小川地区、本川地区、長井地区の3地区に分け、それぞれの地区支部長を兼ねる副会長3人に加え、事務局長と副事務局長を配置。それぞれの支部ごとに地域の課題を見つけ、会員がより具体的に取り組みやすい環境整備に努めている、という。
小川支部は、県内有数の景勝地で、ハンググライダーやパラグライダーといったスカイスポーツの基地として知られるものの、近年は以前のような賑わいがなくなった「鏡山」の再生事業に取り組む。

鏡山からの眺望、眼下には熊野江のビーチと島野浦が見える

鏡山からの眺望、眼下には熊野江のビーチと島野浦が見える

21年度は5月2日から2月28日まで6回にわたって、牧場公園、遊歩道沿いなどの清掃と草刈り、植え込みの剪定を実施。閉鎖されていた焼き肉施設・サニーハウスの修繕、スカイスポーツフェスティバルでの鹿鍋提供とたこ焼き販売、初日の出を見る会などのイベントも行った。
22年度には、清掃作業に加え、鏡山の景観を活かしたトレッキングコースの整備に向けての調査作業も始まった。

本川支部は、町民でも知らない人が多かったアケボノツツジの名所・八本木山(桑原山1407・9㍍)をPRする「八本木あけぼのつつじ観賞ふれあい登山」事業を活動の柱に位置付けた。
初年度の21年度は事前に倒木の除去、木橋仮設、仮設トイレの設置などを行った上で、5月3日に身体障害者を交えての登山会を実施。障害者5人を含む152人が、助け合いながら山頂を目指した。22年度も4月29日に登山会を実施し、約150人が、満開のアケボノツツジを堪能した。今年度は5月1日に第3回を予定。

町南部に位置する長井支部では、他地区に比べ数が激減したホタルを呼び戻そうと「ホタルの里づくり」事業に取り組む。21年度から元琉球大学教授で日向市在住の山口正士さんを講師に、各5回の「ホタル博士育成講座」を開催し、2年間で延べ150人が受講、計40人のホタル博士が誕生している。

また、育成講座で学んだことを実践しようと、ホタルの館と各家庭で、ホタルの幼虫とホタルの餌となるカワニナの飼育もスタート。ホタルが乱舞する環境整備のため、河川敷へのネコ柳の植裁、保護地区の河川清掃、遮光ネットの設置などを展開している。

副事務局長の竹林国興さんは「活動を通じて、人を知ることができた。それぞれに特技を持った人たちがいて、場面場面で柱になってくれた。人も、自然も、これまで見えなかったものが見えるようになったし、地域の関心も高まり、輪が広がってきた」と振り返る。
こうした「やっちみろ会」の活動に触発されたかのように、地域のなかに「川坂川を守る会」「飛石の山を育てる会」「竜の子倶楽部」といった、地域おこしの組織が次々に誕生。「個人で、また団体で、自分たちがやれることをやっていこうという動きが出てきた。やっちみろ会の活動が起爆剤になっていることは確か」という。
早瀬会長は言う。「会員にならなくても、住民みんなが何らかの形で地域興しに取り組むようになってくるのが理想。ホタルの養殖にしても、ダレもが各家庭で取り組める事業。みんなが一緒になって取り組むことで、確実に成果は出てくると思う」。
「やっちみろ会」の活動は始まったばかりだ。

鏡山の閉鎖されていた焼き肉施設・サニーハウスの修繕をした

ふれあい登山では障害者も頂上を目指した

 

 21年度に行った「八本木アケボノツツジ観賞ふれあい登山」の参加者

きれいな紅色の八本木アケボノツツジ

 

 ホタルの里づくり事業で丹仙川の草刈を実施

「北川やっちみろ会」の早瀬会長(中央)と藤田事務局長(右)と竹林副事務局長