県北雑学 絶景、日向市とその周辺


 日向市の東端、陸地が日向灘に向かって没する一帯は「日向岬」と呼ばれ、柱状岩(柱状節理)が見事な景観を呈する。日向市の筆頭観光地・景勝地 として脚光をあびるようになって、駐車場や遊歩道、展望台、案内板など整備がされ、訪れた観光客の評価も高い。絶景の日向岬を訪ねた。

 

東尋坊をしのぐ柱状岩 

宮崎県の海岸は有史以前、日向市美々津付近を境にして北側が沈降、南側は隆起した。その結果、日向市から大分県にかけては、リアス式海岸となって変化に富んだ海岸美を生んだ。昭和49年(1974)、「日豊海岸国定公園」に指定されている。
日向岬が福井県の東尋坊(とうじんぼう)に勝るとも劣らない柱状岩の景勝地として、一般に知られるようになったのは、その直後のことで、一般市民が「馬ケ背」(うまがせ)などの柱状岩の絶壁などを紹介したのがキッカケだった。
市街から15分、気楽に岬めぐり
日向市街から日向岬へは、細島を経由するコースと、伊勢ケ浜側から入るコースとがある。二つのコースは「馬ケ背」「細島灯台」の入り口でドッキング、道路事情も良く気楽に岬めぐりができる。
例えば細島を経由するコースの場合、日向市街から細島の街中を抜け、御鉾ケ浦から「黒田の家臣」と呼ばれる平床岩を左手に見て少し行けば、馬ケ背・灯台入り口に出る。日向市街から車で15分ていどの行程。

絶景、馬ケ背の断崖絶壁

日向岬は見所が多く、そのハイライトが「馬ケ背」。岩場の両側が切り立った断崖をなし、馬の背のように狭くなっているのが名前の由来という。駐車場から徒歩6、7分で行ける。
馬ケ背の斧で断ち切ったような断崖絶壁は、見る人を圧倒する。手すり越しにのぞき見る柱状岩の谷間は、足がすくむほど深く、高さは70メートル。案内板には「日本一の柱状岩」とある。絶壁の下からザザーッと砕ける波の音を包み込んで潮風が吹き上げてくる。
馬ケ背の断崖から2分ほど行くと急に目の前が開け、日向灘の大海原が広がる。展望台から見る水平線は、気のせいか、かすかに丸みを帯びている。
そこから岬の突端に向かって、両側に手すり付きの遊歩道が50メートルほど続く。眼下の海は透き通り、都会から来た人はこの海の色にも驚く。すぐ東には釣 り人に人気の離れ小島の飛島(沖のトベ)、はるか北東沖は枇榔島(びろうじま)、その左手に遠見半島や門川湾、南は平岩の海岸が望める。

細島灯台からの眺めも抜群

日向岬のテッペンには、白亜の細島灯台がある。駐車場から徒歩5分ていど。以前は気象観測所が併設され、職員が常駐していた。海面からの高さ101メートル。初点灯は明治43年(1910)だから今年で101年。海側に木製の展望台があり、ここからのながめも格別。
昭和20年(1945)9月17日の「枕崎台風」のとき、最大瞬間風速・75・5メートルを記録している。ダントツの日本記録だったが、75・5メートル を記録した時点で、ロビンソン風速計の風杯が吹き飛び、未公認日本記録扱いになった。気象庁の職員が「まさかそんな強風が吹くハズはない」と、この〝大記 録〟を信じてくれなかったというエピソードも。

ねがい叶う?クルスの海

馬ケ背・灯台入り口の駐車場から南の方へ車を2分ほど走らせると、海面が十文字になった「クルスの海」が現れる。断層によって造られたもので、岩と 岩に挟まれたエメラルドグリーンの海が、文字どおり十字形をなし、自然の造形とはいえ、良くできている。「クルスの海」とはよく言ったものだ。
さらに、クルスの海から少し離れた岩場を合わせると「叶」の文字に。展望台には「クルスの鐘」があって、時折り、鐘を鳴らすカップルを見かける。鐘の台座に「ねがいが叶う」と刻してあるが、果たして?。
柱状岩の頭を歩くサンポウ
クルスの海のすぐ南西側に「サンポウ」と呼ばれる岩場がある。ここは柱状岩の頭の上を歩くことになる。柱状になった節理を上から観察できるのでおもしろい。
展望台の南は日向灘、東は海に突き出した柱状岩の岩場がいくつも並び、西は滑り台のような岩場と、遠くにお倉ケ浜の砂丘と防風林が見渡せる。
サンポウから西へ車で1分ほど進むと、野外ステージや広い芝生の多目的広場などがある「日向岬グリーンパーク」、さらにそのすぐ西側から「米の山」へ向かう道路が伸びている。米の山からは日向市街の夜景も眺められることから、人気スポットの一つだ。

 
 
  


 岬の突端に続く遊歩道馬ケ背遊歩道から南側の風景
 
 細島灯台 クルスの海
  
 サンポウ